あらすじSTORY

　僕の故郷は札幌の片田舎だ。
　　山の麓に家があり、そこから車で10分も走れば海がある。
　　その「金山」と名づけられた町は、かつて金を採掘する鉱山として賑わっていたが、そのうち金は採り尽くされ、名前だけが残った。
　テレビの向こうではたくさんの物語が生み出されていたが、抜け殻のようなその町で繰り返される日常は、僕の理想とはかけ離れていた。
　　このまま、この町で、ありきたりな人生を受け入れて生きていくのは嫌だ。

　　だから僕は日常を妄想で塗り固める事にした。
　　思春期の想像力を以ってして、現実を破壊し、作り変える事に躍起になっていったのである。
　　もちろん、当たり前に人生はそんなに簡単ではなくて、気を抜くとすぐ目の前には、現実が聳え立っていた。

　これは、僕が、その拗らせた妄想を仕事の手段にするまで。
　現実を受け入れて、作り替えた日常にさよならするまでの話だ。

　僕は、価値を失ったこの町で、どうしても価値のある人間になりたかった。

　その抵抗を嘲笑うかのように、今日もゴールドマウンテンが僕を見下ろしている。